Metal Gear Solid
『たった一つの天国』
唯、雪の上を歩いた。
黙々と、踏み締めるように。
消せない足跡を残しながら。
その傍らに、体の何処から流れる、鮮血を滴らせつつ。
──何故、こんな風に、こんな有り様になってまで、己は『此処』を歩き続けているのだろう、と。
彼は思う。
何故、歩き続けているのだろう。
何故、立ち止まらないのだろう。
どうして己は『此処』でこうしているのか。
…………その理由は彼にも判っている。
テロリスト達の野望を阻止する為に。核の発射を阻止する為に。己はこうしているのだ、と。
兵士として。国の為に。謂れなきことで命を奪われ掛けている、名も顔も知らぬ数多の人々の為に。
…………でも、何故、己は『此処』にいるのだろう。どうして、こうしているのだろう。
立ち止まることもせず、唯、黙々と歩き続けて、一面の雪原を、ブリザード吹き荒れる中、自らの命を懸けてまで、とも彼は思う。
彼が歩き続けるのは、きっと。
立ち止まれないのは、きっと。
誰かの為でも、国の為でもない。
唯、黙々と歩き続けていると。
立ち止まることを捨て続けていると。
時折、不意に、彼の耳許で、声が甦る。
戦いの中にしか、兵士が生きられる場所はない。
戦士が唯一、生の充足を得られる場所、それは、戦い。
そして、戦争。
たった一つの信念であるかのように、それを唱え続け、抱き続けた男の声が、時折、不意に、彼の耳許で甦る。
──アウターヘヴン。
兵士達の、兵士達だけの、『天国』を創り上げようとした男の声が。
唯、雪の上を歩いた。
黙々と、踏み締めるように。
消せない足跡を残しながら。
体の何処より、鮮血を滴らせつつ。
彼が歩き続けるのは。
立ち止まれないのは。
戦いを制した先に訪れる、『未来』の為か、それとも。
唯一の、充足の為か。
──アウターヘヴン。
兵士の為の、たった一つの『天国』。
そこよりの囁きは、確かに、彼の耳許で。
End
後書きに代えて
コメディ書こうかと思ったんですが、シリアスにチャレンジ。
何となくねー、コメディは、MGS1じゃなくて、MGS3のスネークの方が、より相応しい気がしたの(笑)。
MGS1以降のスネークも、充分コメディ要員だとは思うけどね。段ボールへの執着とかさ!(笑)
──それでは皆様、宜しければご感想など、お待ちしております。